結婚と仕事と

河合奈保子さんは現在休業中ですが、その復帰問題に関して、以前奈保子さん自身が「結婚したら歌手を辞 める」と言っていた、というようなことが引き合いに出されます。この件に関して整理してみましょう。 　なお、本件に関しては、あくまで参考データとして読んでいただければと思います。復帰問題そのものを論ずる つもりは今のところありませんので(^^;

「わたぼうし翔んだ」にみる結婚観・仕事感

奈保子ファンの間ではバイブル的存在のエッセー「わたぼうし翔んだ」ですが、確かに「結婚したら歌手を辞め る」と書かれている部分があります。おそらく皆さんこれを指摘されているのだと思います。 ------ 　”いつまでも歌いたい”この気持ちにうそはありません。だけど、私も女の子。 　いつか好きな人ができて恋をしたら・・・・・・結婚するかもしれません。その時は、歌手をやめます。キッパリと やめようと、決めています。 　私はとても不器用な人間。ひとつのことに夢中になったら、他のことが見られなくなるような気がするんです。 家庭とお仕事の両立なんて、とてもできそうにありません。その時が、いつになるかわからないけれど、その日 がいつ来るか心配だけれど、それまでは精一杯の心で歌っていきたいと思っています。 ------ 　〜第三章「思い出にくるまって」の「本当の歌を歌いたい」の節より 　ほぼ同じ記述がこのエッセーの後半にも出てきます。しかし、奈保子さんの「宣言」に対して母君は少々懐疑 的のようです。 ------ 母「結婚をしないで一生歌いますって言われるのも心配やけど、何や、奈保子は一生お仕事をしているような 気がするわ。はなやかな所に、ずうっといるような気がするの」 奈保子「結婚したら、絶対に歌手はやめるつもりでいるもん」 母「でもねえ、私のように、ジッと家にいるだけでは満足できないんやないかって、心配になるわ。だって、みん な引退して結婚しても、すぐにカムバックしとるしねえ」 父「まあ、気楽に、好きなようにやればいいんじゃないか？」 ------ 　〜第五章「健康っていいな」の「恥ずかしいやない」の節より 　この本を読む限りにおいては、83年当時、奈保子さんは間違いなく、結婚したら歌手を辞めると心に決めてい たのでしょう。理由もはっきり明示されています。しかし、これで結論付けるのは早計です。

「大人の始発駅」にみる結婚観・仕事感

「わたぼうし翔んだ」から1年後、再びエッセーを発表しておりますが、考え方が変わってきたようです。 ------ 　仕事は・・・・・・ 　もし結婚していれば、やはり家庭は大事にしたいですね。だんな様の迷惑にならない程度、ゆったりとしたペ ースで仕事をしているような気がします。 　歌はきっとやめられないと思います。ただ現在のようなスケジュールは無理でしょうから、そのへんのところは 上手くやっていければ最高ですね。 　（中略） 　10年後・・・・・・ 　もしかしたら結婚して子供が生まれ、育児に専念しているかもしれません。 　もしかしたら、独身のまま歌い続けているかもしれません。 　もしかしたら、歌手をやめて他の仕事をしているかも・・・・・・。 　どんな未来が私を待っているか分かりませんが、その状況の中で幸福な気持ちを持っていればかまわないと 思うのです。 　同じ人生なら、楽しくありたいですものね。 ------ 　〜五章の「自分の人生、自分で決める」の節より 　また、結婚話に関して、母君の言葉を次のように受け止めております。。 ------ 　「女の幸福は、好きな男性と結婚して、かわいい子供を産むことなんですよ」 　この言葉には、母の実感がこもっていました。 　小さい頃から母を見てきました。父や私たちのために、洗たくをしたり、食事を作ったりしているときの母は、い つも歌を口ずさんでいました。 　こう、嬉しそうで、満ちたりた表情をしていました。父や子供たちのためにする全てのことに喜びを感じているよ うに、私には見えたのです。 　そんな母を見て育ったのですから、やっぱり結婚に憧れています。もちろん、両親のように恋愛結婚です。 ------ 　〜二章の「母とワインを飲みながら」の節より 　明らかに1年前とトーンが違います。10年後、どうなっているかは見通せないとしながらも、「歌はやめられそう にない」とおっしゃっています。この時点で「わたぼうし翔んだ」の「キッパリやめる」発言は撤回されたと言って いいでしょう。ただ、どのような将来になっていたとしても幸福な気持ちを持っていればかまわないという点や、 夫や子供の世話をすることに喜びを感じるということに共感を覚えるというくだりからは、「家庭生活に専念」も選 択肢には入っているとも言えるのでしょうね。

そして「婚約会見」にて

「大人の始発駅」から11余年、婚約時の記者会見の様子が老舗ファンサイト「Naoko Home」に載っています。 ------ 記者---どんな結婚生活、どんな家庭をおくりたいですか 　そうですね、常に、幸せを感じられて、二人とも、偶然ですけど”保（たもつ）”っていう字が名前にありまして、 お互いに・・愛を保つ気持ちをね、持っていて、温かい、温かい家庭を築いていきたいと思います。 　金原さんという、すばらしいパートナーに支えられながら、よりいい仕事も続けていきたいと思いますし、末永く 見守って、また、今まで以上に応援していただけると、すごく・・うれしく思います。・・はい ------ 　少なくともこのときには、仕事をやめるなどということは口にしておりません。そして実際に、量はともかくとして その後出産準備に入るまでは活動されておりました。

総括

ということで、「結婚したら仕事をやめる」というのは、そう考えていた時期もあったもののその後取り下げてい て、実際そのとおりにされていたわけです。よって、「わたぼうし翔んだ」を復帰悲観論に結びつけなくてもよいと 考えます。 　では、現状との不一致はどう考えるか・・・。 　容易に考えられるのは、育児の負担が思った以上に大きかったのではないかということ。また、「結婚したら 仕事をやめる」という考えが途中で変わっていったように、実際に家庭生活を続け、お子さんも誕生したりしてい くうちにまた考えが変わったということもありえるかもしれません。子供ができて人が変わった、って話はよく聞 きますので・・・。そのほか当初予想しなかったようなパラメーターが存在するのかもしれません。 　いずれにせよ、奈保子さんは「家庭を大事にしたい」という気持ちにぶれは無いのは間違いないところですか ら、その辺り、個人的には察してあげたいなと思います。 　でも、できることなら今の素直な心境を、奈保子さん自身が綴った言葉で伺いたいですね。